547号 「社会的入院」のあいまいさ 療養強化型(仮称)の施設要件、運営基準に焦点

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 いわゆる「社会的入院」については、定義が明確でないことから、取り上げ方も様々でマスコミ、医療施設関係者、介護サービス関係者などで内容が異なっていた。はやり言葉のように使われた傾向を、「受け売りしない警戒心は、共有しておく必要」(※1)があると滝脇憲氏(自立支援センターふるさとの会)はその一面を切り取った。
 平成13年当時、社会保障審議会介護給付費分科会が発表した資料を元に、社会的入院の調査で頻繁に使われた「治療が必要」、「退院可能」という用語の分類に明確な基準はなかったと明らかにした。当時の老人保健課長の言葉を借りて、社会的入院の幅は様々であるとし、「白黒と明確にくくれないからこそ、鍵括弧を使う」と明確な定義のないまま用語が使われている点を指摘した。
 医療保険、介護保険の財政面では、長期入院患者の医療費単価と介護施設の費用の格差は縮小傾向で、「ケースによっては逆転する傾向」(※2)にあることから介護療養病床の廃止・転換を進めていく際、医療費適正化には貢献しても介護保険財政には逆効果をもたらす構図が明らかになったが、「一般病床から療養型病床群へシフトすることによる費用削減効果は期待できない」ため、介護病床へさらに在宅医療へ分散することによる効果が期待された。
 社会的入院の定義をめぐって、懐疑的な人々がいるのに対して、機能に着目し、利用者と施設の関係を明らかにした議論もある。介護療養型医療施設の機能が、「療養病床の廃止でも再編成でもなく果たしてきた機能と名前を一致させようとした」(※3)ことを理解すべきだと提言する田中滋氏は、療養病床の機能を否定するのではなく、機能区分を明確にして、「機能にふさわしい名前に転換する」と転換を勧める立場を明らかにした。
 「厚生労働白書に登場する「社会的入院」は、「介護サービスを必要とする高齢者が家庭や福祉施設に受け皿がないことなどで病院の入院を選択した」(平成18年)と「社会的入院」が助長された点を施設、サービスの不足に求めた。
 「療養病床の患者の約半分が医師による指示の変更がほとんど必要ない方たち」(平成19年)と医療必要度を尺度に用いて患者を選別した結果、介護施設への転出が増加した。
 介護療養病床の入所者の状態像は、「医療療養病床の患者よりも「医療区分1」の占める割合が高く、「医療区分2・3」の割合が低い。医療療養病床では医療区分3の患者が増加し、介護療養病床と医療療養病床の機能分担が進んでいる」。ADL区分ではかると、介護療養病棟では「医療区分1かつADL区分3の患者が多い」。介護療養病棟の医療提供は中心静脈栄養、人工呼吸器の使用、気管切開、酸素療法を行う患者の割合が医療療養病棟より低く、病状の見通しについては「不変」とする割合が高くなっている」(※4)と報告している。
 平成26年度調査によれば他の介護保険施設に比べ「経管栄養」、「喀痰吸引」、「摘便・浣腸」等の処置を受ける割合が高く、医療療養病床と競っている(※5)。
 介護療養病床は医療必要度の低い医療区分1が多い。「病状の見通し」について「不変」というのは「医療の必要度が低い」と同義ではないとする医療関係者は多い。医療区分1でも緊急な医療の必要度ではないが医療的観察が必要とされる「重度意識障害、がんターミナル(余命一か月は医療区分1-5、6か月は医療区分1-3)、肝不全」など重症な病態まで含まれているを日本慢性期病床協会が試案(※6)を発表している。
 第113回社会保障審議会介護給付費分科会(平成26年11月6日)の論点に示された「療養機能強化型介護療養型医療施設(仮称)」への転換要望は平成30年3月末までが移行期間となる予想だ。施設要件、運営基準が大きな焦点になる。
※1 (滝脇憲「社会的入院問題から居住支援と地域ケアを考える」季刊「シェルターレス」No.33)
※2 (畑農鋭矢「社会的入院の定量的把握と費用推計」(千葉大学・財務省総合政策研究所)医療経済研究vol.12 2004)
※3 (田中滋「介護保険と介護市場をめぐる政策の展開」(慶応義塾大学名誉教授)医療経済研究vol.19 2007)
※4 「医療施設・介護施設の医療者に関する横断調査」平成22年6月調査

医療区分3 
【疾患・状態】
 ・スモン ・医師及び看護師による24時間体制での監視・管理を要する状態
【医療処置】
 ・中心静脈栄養 ・24時間持続点滴 ・レスピレーター使用
 ・ドレーン法・胸腹腔洗浄 ・発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管のケア
 ・酸素療法 ・感染隔離室におけるケア
医療区分2 
【疾患・状態】
 ・筋ジストロフィー ・多発性硬化症 ・筋萎縮性側索硬化症
 ・パーキンソン病関連疾患 ・その他神経難病(スモンを除く)
 ・神経難病以外の難病 ・脊髄損傷 ・肺気腫・慢性閉塞性肺疾(COPD)
 ・疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍 ・肺炎 ・尿路感染症 ・創感染
 ・リハビリテーションが必要な疾患が発症してから30日以内 ・脱水
 ・体内出血 ・頻回の嘔吐 ・褥瘡 ・うっ血性潰瘍 ・せん妄の兆候
 ・うつ状態 ・暴行が毎日みられる状態
【医療処置】
 ・透析 ・発熱又は嘔吐を伴う場合の経管栄養 ・喀痰吸引
 ・気管切開・気管内挿管のケア ・血糖チェック ・皮膚の潰瘍のケア
 ・手術創のケア ・創傷処置 ・足のケア
医療区分1 医療区分2・3に該当しない者
※5 「平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成26年度調査)『介護サービス事業所における医療職の勤務実態および医療・看護の提供実態に関する横断的な調査研究事業』」
※6 日本慢性期病床協会 平成23年4月調査
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