546号 十年おきに繰り出された長期療養病床の施策

 
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 老人福祉・老人医療で対応してきた対象者のうち、医療の必要性が低く、介護サービスを必要とする高齢者が家庭や福祉施設に受け皿がなく、病院を入院先として選択する、いわゆる「社会的入院」が発生する背景には、老人福祉・老人医療の制度による対応には限界があるといった問題点があったと厚生労働省HPの「介護保険制度の概要について」が指摘する。

療養病床の歴史
 1973(昭和48)年、老人福祉法の改正により、70歳以上の高齢者の老人医療無料化が制度化された。長期にわたる療養や介護が必要な高齢者は、病院が福祉施設の代替機関として高齢者の入院を受け入れ、病院の増床・増設が全国的に広がり、病床数が増大した(昭和50年一般病床72万2千床→平成2年125万4千床、病床数7割増)。
 診療報酬は出来高制を採用、処置、医薬品の処方などすべての医療行為が収入に結びついていた。必要以上の投薬、点滴・検査が行われ、「薬漬け」「検査漬け」が一般的に行われていた。こうした青天井ともいえる高齢者の医療費増に歯止めをかける適正化を図った厚労省は、1986(昭和61)年には出来高制から1日あたりの定額制に移行した。
診療報酬の定額制 特例許可老人病院
 療養病床のもとになる病床の出現は老人医療無料化が施行された時期に見られる。1983(昭和58)年、老人保健法の施行に伴って長期の慢性疾患の多い老人の心身の特性にふさわしい診療報酬を設定するという点から「特例許可老人病院」及び「特例許可外老人病院」という制度が設けられた。
 「特例許可老人病院」は入院患者のうち65歳以上の高齢者の占める割合が60%を超える老人病院で、医師の配置を一般病院よりも少なくし、その代わり介護職員を置くなど一定の基準を満たす病院を特例許可老人病棟とし、診療報酬を定額制にした。
 特例許可老人病棟の人員配置基準は、患者100人に対して医師3人、看護師17人、介護職員13人(一般病棟の場合は、患者100人に対して医師6人、看護師25人)。
 70歳以上の高齢者の比率が60%以上の病院を特例許可外老人病棟とし、さらに診療報酬を減額した。

療養型病床群
 1992年(平成4年)の医療法改正で一般病床とは区別された療養型病床群という制度が導入された。療養型病床群は、病院または診療所の病床で、主として長期にわたり療養を必要とする患者を収容するための病床で、人的・物的に長期療養患者にふさわしい療養環境を有する病床群である。
 2001年(平成13年)に施行された改正医療法により、従来の療養型病床群が療養病床と名称を変更し、新しい制度としてスタートした。同法により、病床区分が見直され、従来の「その他の病床」が、「一般病床」と「療養病床」とに分けられた。
 介護保険がスタートして、当時約20万床あった療養型病床群は老人病院から介護保険施設へと姿を変える予定だった。
 医療施設としての病床から介護保険施設への移行は医療施設側の主体性にまかされたため介護保険施設へと転換したのは約半数だった。
 医療施設における社会的入院の解消という状況を変えるほどの病床転換ではなかった。療養型病床群から介護保険施設への部分的移行は入院医療の費用から介護保険施設へ移行しただけに終わり、介護保険制度の創設が社会的入院を解消する契機とはならなかった。
 介護保険施設は介護認定という繁雑な仕組みがあるが、わが国の医療保険は国民の誰もが、容易に診察を受け、症状によって入院もできる国民皆保険、フリーアクセスに守られてきた。こうした医療保険と違い、手続きの煩雑さが介護保険施設入所を遠ざけてきた要因とも言われる。欧米に比べ「医療資源の投入が極端に低密度で、長期の入院が高齢者のQOLを下げている」と印南一路氏は指摘する(「社会的入院の研究」)。
 介護保険施設では、医療機関以上の参入規制が設けられている。特別養護老人ホームは社会福祉法人、地方自治体、社会医療法人、老人保健施設は社会福祉法人、医療法人、自治体、介護療養型医療施設は医療法人か自治体というように、開設できる法人に規制がかかっている。都道府県は介護保険支援計画、市町村には介護保険計画があって、医療機関の病床規制と同様に、地域内に開設できる施設数を限定する総量規制が行われているため、施設数が限定されたという側面も否定できない。(バックナンバーをご覧になりたい方はこちらをクリックしてください→http://www.medical-news.jp/archives.html