同センターは、高知県立中央病院と高知市立市民病院を統合し、新病院として建設することを決め、高知県・高知市病院企業団を設立し、病院建設と運営をPFI事業方式で行ったもの。高知県は人口あたりの病院数は全国一であるが、高度な医療については県外の医療機関に流れる傾向があった。新病院は高度な医療「がんセンター」、「循環器センター」、「地域医療センター」、「救命救急センター」、「総合周産期医療センター」の5つの機能を併せ持つ病院として運営されている。
累積欠損は約70億円に
同センターの2007年度決算では、入院患者が17万5、775人(480・3人/日)、外来患者数は延べ16万6、682人(680・3人/日)で、経常収支は収益158億1、453万円に対し、医業費用176億8、851万円で18億7、398万円の損失となった。18年度赤字は20億7,580億円、17年度赤字は17億7、920億円で、07年度の特別収益を加えた経常収支で累積欠損は58億982万円となった。加えて、2008年度病院事業会計の決算見込みが約21億1、200万円になると、16日の病院企業団協議会で明らかになり、累積欠損は約70億円になる見込みとなった。
自治体が地方債を起債して長期資金を調達することはこれまで皆無だったが、PFI方式を使えば民間金融機関から長期の資金調達ができるため、社会的資本である病院やその他の公共物がPFI方式で建設され、事業運営されている。ところが、高知医療センターの場合は、これまでの自治体病院建設がそうであったように、採算を考えずに病院建築を行ってしまったため、高額な建築費が病院経営を圧迫し、累積赤字が継続することになった。
PFI事業で建築した自治体病院は結局高い建築費になると指摘したのは城西大学経営学部准教授伊関友伸氏で、著書の中で「行政はキャッシュフローを考えた建築を考えない」うえに、「起債制度と交付税措置」がPFIでも変わらない点を上げる。そして、病院を利用する市民には病院の経営が厳しくなるまでは病院のキャッシュフローに関心がないことも上げる。また、「設計事務所が病院経営について知らない」点については、PFI事業での設計、建設、管理運営が一体となった性能発注では建築経費が期待できるが、経費をできるだけ削減した病院建築へのインセンティブは少ないと指摘する。
だが、同医療センターのふくれあがった病院建設費は、PFIの問題ではなく発注側が過大な設計をしたことに基づいていること、自治体側も過大な発注を抑えきれないと問題点を挙げる。
高知医療センターと同じくPFI方式で新病院を建設し、運営を行ってきた近江八幡市立総合医療センターは昨年12月にPFIの契約を解除し、市直営の病院として再スタートした。PFI方式で経費削減やサービス向上が見込まれたが、SPCへの支払いが逆に病院経営を圧迫し、赤字に追い込まれた。近江八幡市は、SPCへ20億円の解決金を支払い、PFI事業を解約した。
新築で、吹き抜けのある病院、アメニティーにも優れた病院には医師も喜んできてくれるだろうといった甘い期待は、医師の確保対策にならないばかりか、巨大な建築費だけが残ってしまう。PFI方式が陥りがちな先例である高知医療センターと近江八幡市立総合医療センターが相次いで契約解除に至ったことからPFI方式の評価が低まる可能性も懸念される。





